
現代ブラジルを代表する巨匠、レチエレス・レイチが残した傑作2タイトルを日本独自でCD化。こちらはレチエレスが自身のクインテットで録音した作品で、ウェザーリポートやリターン・トゥ・フォーエヴァーがブラジルのバイーアで録音したような、アフロブラジリアン・クロスオーバーの大傑作!
2021年10月27日に61歳で新型コロナウイルスの合併症により惜しくも帰らぬ人となってしまった作編曲家/管楽器奏者のレチエレス・レイチ。イヴェッチ・サンガロの音楽監督としてキャリアを築くも、並行して自身のアイデンティティであるアフロ系ブラジル人としての音楽表現を追求。オルケストラ・フンピレズを率いたほか、マリア・ベターニア、カエターノ・ヴェローゾらの作品を編曲。またフンピレズ・インスティテュートを主宰し、ロウレンソ・ヘベッチスら後進の音楽家にも多大な影響を与えるなど、ブラジル音楽を代表するマエストロとして今まさにキャリアのピークを迎えている最中だっただけに、彼の突然の訃報はブラジル中で大きな悲しみをもって迎えられた。そんなレチエレスが残した作品のうち、日本で未紹介のタイトルをリリースしようというのが今回のプロジェクトである。
こちらは2019年にリリースされた自身のクインテットを率いての作品で、リリース当時、配信のみであったもののブラジルだけでなくここ日本でも話題となった。レチエレスは典型的なジャズ演奏のフォーマットを念頭に置いていたというが、そのなかでアクセントとなっているのがドラマーとともに配されたパーカッショニスト、ルイジーニョ・ド・ジェージの参加だ。カンドンブレの伝統を体現する彼の参加が、本作に宇宙的ともいえる無限の広がりをもたらしている。またコード楽器を交えない無骨なアンサンブルが特徴のオルケストラ・フンピレズとは異なり、鍵盤奏者のマルセロ・ガルテルが参加しているのもポイントだろう。自由度の高いアンサンブルのなかで、いつになく伸び伸びとソロをとるレチエレスのパフォーマンスは圧巻の一言だ。
ウェザーリポートやリターン・トゥ・フォーエヴァーを思わせるクロスオーバー・ジャズの傑作から、フェラ・クティのアフロビートまでを思わせる濃密さまでが混在した、あまりに衝撃的な一枚。レチエレス・レイチの功績が浸透しつつある今、あらためてじっくりと聴きたい作品だ。
パーソネル :
Luizinho do Jêje: atabaques, timbau, agogôs, and sound effects
Marcelo Galter: acoustic piano, Rhodes, Wurlitzer,Minimoog, Roland RS-202, harmonium
Ldson Galter: double bass
Tito Oliveira: drums, atabaque, agogô
Letieres Leite: compositions, flute, alto flute, soprano and alto sax, caxixis, agogô
■トラックリスト :
1. Casa do pai / 2. Três Yabás
3. Patinete rami rami / 4. Honra ao Rei
5. Catalunya vuelve a casa / 6. Tramandaí
7. Mestre Moa do Katendê